第2話 出産 筋ジストロフィーの息子と共に生きる父のブログ

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筋ジストロフィーの息子と共に生きる父のブログ 第2話

結婚に向けて

無事にママちゃん両親にご挨拶が終わった。

お腹が大きくなる前に結婚式を挙げることに。

インターネットがまだ全然普及していなかったので結婚情報誌を買って式場を巡る。

色々な式場を休みの度に見て回る。

予算と時間どちらもあまりない。(笑)

やっと式場が決まり細かい打合せに何度も何度も通う。

忙しかったけど楽しかった。

同時進行で新居を探す。

こちらの予算も当然少ないのよ。(笑)

友達が宅建の資格を持っていて不動産会社に勤めていたので

一日中いろんな物件探しに付き合ってもらう。

新しい物件の情報や物件を管理している不動産会社との家賃交渉など

凄く助けてもらった。

おかげで希望にほぼ近いマンションを契約できたのだ。

式場探しと物件巡り、そして式場との打ち合わせやドレス選び。

新居の家具や家電購入。

あっという間の日々。

でも新しい生活が始まるワクワク。

子供ができるドキドキ。

凄く楽しかった。

結婚式 そして新婚旅行へ

バタバタの毎日が過ぎ結婚式前日。

お互いの親戚と仲のいい友達、勤め先の方を招いての結婚式。

地方からの親戚も来てくれてDaddyの実家に泊まる。

人が多くて寝る場所が無いと言う事でDaddyと親父は新居に寝ることに。

親父は数年前から体調を崩し何度も入退院を繰り返していた頃。

もうあまり長くないと医者にも言われてたし、親父も家族も知っていた。

それでも男同士と言うのは あまり話さない。

照れくさかったんだろうな。

黙って二人で車に乗り新居に到着。

Daddyが布団を敷くと さっさと親父は寝てしまった。

これが親父と過ごす最後の夜だった。

もっと色々話せば良かったな。

本当はたくさん話したかったのに。

親父はどうだったんだろう。

次の日もほぼ話さず実家に戻り、親戚と一緒に式場に向う。

たくさんの人に祝福されて幸せな結婚式。

最後に親父がDaddyが勤めていた会社の社長の手を取り

無言で握手をした。

社長もその握手に応えるように力強く握手をしてくれた。

その光景を黙って見ていた。

言葉はかわしていなかったけど、きっと意味があったんだろう。

親になって、その握手の意味がよくわかる。

重い引き出物を持って無事に結婚式が済んだ。

1本の電話

結婚式の次の日、ホテルから新婚旅行に向う。

予算もあまりなかったし、妊娠しているママちゃんの事を考えて国内旅行だ。

さっそく忘れ物をしてママちゃんの実家へ(笑)

「おかえり、もう帰ってきたんか」

と冗談を言われながら、いよいよ出発。

新婚旅行の目的地は北陸。

Daddyの親戚がいる場所でもある。

少しお高い宿に泊まり美味しいご飯を食べる。

観光を楽しむ。

また宿で美味しいご飯を食べ観光をする。

幸せな時間だ。

新婚旅行も最終日になり最後の観光地に向かっていた。

そして1本の電話が鳴った。

兄貴からだった。

「もしもし、Daddyか新婚旅行はどうや?」

「楽しんでるよ。どうしたん?」

「親父がな、もうもたんわ…」

「そっか…わかった。帰るからもたせて。」

ママちゃんも理解してくれて帰ることにした。

新婚旅行を途中で中止して、高速を飛ばして帰る。

最後に話したかったな…

色々な事を考えながら、運転していた。

ママちゃんのお腹を気遣いながら、たまに涙ぐんだり(笑)

数時間後、病院に付いた。

病院のベッドに寝てた親父は もう意識はなかった。

ちゃんと結婚式を見届けてくれたんだろうな…と思いながら顔を見てた。

最後に会えてよかった。

しばらく親父の顔を眺めて

「先生にありがとうございました。」

と言った。

わかりましたと呼吸器を止めてくれた。

モニターのアラームが鳴り

親父は旅立った。

無茶苦茶だったけどカッコイイ親父だった。

自分の人生は最高だった。

もういつ死んでも後悔はない。

そう言っていた親父。

俺の子供見て逝かんかい!

これからはDaddyも親になる。

しっかりせーよ

と最後に教えてもらった気がする。

そして陣痛が来た

親父の葬儀も終わり、約半年。

ママちゃんと二人の生活。

あっという間に時間が過ぎた。

予定日は9月 暑い時期に大きなお腹で家事するだけでも 大変なのがよくわかった。

予定日も近くなり夜二人で ママちゃんの実家でのんびりしてたら(里帰り出産)

「あ…おまた…ぷちって言うた…来たかも」

おしるしだ

え…いま?

うそん…マジか

とりあえず初産なので病院に連絡してみる。

「初めてだし 念の為おいで〜」

と言われ 二人で車で病院へ向かった。

診察室の前でママちゃんを待ってると ママちゃんが出てきた。

「まだ全然かかるから 歩いておいでってさ」

二人でテンション上がってたけど大人しく帰った(笑)

次の日 猛暑の中 ママちゃんは散歩したようだ。

女の人はすごいなぁと思う。

その日の夕方 陣痛が来た。

病院に連絡して二人でテンション上がり気味で病院に向かった。

「まだかかりそうだけど 今日っぽいから このまま入院しようか」

そのまま入院することになった。

Daddyだけ実家にもどり荷物をまとめて病院に戻った。

夜23時過ぎになり 陣痛が10分おきになってきた。

助産師さんが うまく痛みを逃がしてくれる。

見よう見真似でさすってみるけど 違うらしく怒られる(笑)

結局 1晩中 陣痛に苦しんでたけど 時計を見ると もう朝だった。

会社に電話して休みをもらった。

陣痛室にもどり 背中をさすったり 腰を押したり できる事は何もないけど やれることはやった。

頑張れ!ママちゃん

陣痛室にいると時間の間隔が無くなり ママちゃんに運ばれてきた食事が目に入った。

「ご飯たべれる?」

聞くとママちゃんは、首を横に振る。

痛さで それどころではないようだ。

「ダッシュで食べるから 食べていい?」

ガン無視やん…

もう一度トライだ。

「食べていい?」

すげー睨まれたけど うなづくママちゃん。

今までないスピードで掻き込むDaddyを見て

ママちゃんが 一言…

「そんな美味いか?」

………怖っ!めっちゃ怖っ!

あの可愛いママちゃんは どこいった!

ご馳走様をして また痛みを逃がすためにマッサージをする。

出産ってこんなに長くかかるものなのか…凄まじい……

結局 その日の夜も陣痛は5分間隔だったり10分だったり でもまだ半分ぐらいしか 開いてきてないらしい。

ママちゃんの体力も限界っぽいけど 大丈夫なんか…

続く…

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