第4話 子癇発作 筋ジストロフィーの息子と共に生きる父のブログ

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筋ジストロフィーの息子と共に生きる父のブログ 第四話

冷静になれない自分

起こっては行けない事が起きたけどママちゃんも赤ちゃんも無事だ。

とにかく良かった。

赤ちゃんはNICUへ ママちゃんはナースステーションから観察できる観察室へ運ばれていった。

2人が運ばれて落ち着いたところで担当の医師と産婦人科の部長と話しをする事ができた。

話の内容はよく覚えてないけど部長さんの話では

子癇発作 (ウィキペディアより)

が起きたらしい。

妊娠中毒症の兆候もなかったけど起きてしまった。

やり場のない気持ちをぶつけてしまった。

「絶対に起きてはならない事が起きてしまいました。」

「は?起きてはならないこと?あの状況なら当然やろ!」

「お産は ふた晩もかけてやるもんなんですか?」

「体力も限界で助産師さんしかこないし、おかしいやろ!」

「どう考えてもおかしい!帝王切開に切り替えるとか方法なかったんか!」

慌ただしさの残る産科に怒鳴り声が響いてた。

病院側は謝ったのかどうかも覚えてない。

経過は責任持って診てくれると言う。

寝不足で脳みそがフリーズしてるDaddyには精一杯だった。

お義母さんから 話を聞いたお義兄さんやお義父さんが待合室にいた。

お義兄さんは裁判がどうとか色々説明してたし 医療裁判の資料等持ってきてくれてた。

クタクタの頭には もう勘弁してくれとしか思考が働かなかった。

お義兄さんなりに色々考えてくれたんだろう。

そこまでの器量がなかった。

いつの間にか夕方になって面会時間は終了。

顔見知りは全員帰宅していった。

初めて見た息子

赤ちゃんはNICU、ママちゃんは観察室にいる。

1人ぼっちで孤独に潰されそうになった。

誰かと話す事がこんなにも安心する事だと思わなかった。

ママちゃんが泡を吹いた瞬間が頭から離れないし、後遺症が残る覚悟もしてた。

運ばれて行った赤ちゃんの肌の色も思い出す。

2人とも後遺症が残ると思うし これから大変だろうな

俺1人で支えていけるんかな…色んな事を考えながらロビーで座ってた。

会社の社長に色々あったけど生まれた事の報告と今日の出来事を報告する電話をした。

「もしもし…あ、お疲れ様です。Daddyです。すいません迷惑かけてます。」

「お!どうだ?生まれたか?」

聞きなれた声を聞いた瞬間 号泣してしまった。

かっこ悪いね(笑)

泣きながら事情を説明してゆっくり休めって言ってくれた。

優しい社長。

もう1人ママちゃんの友達に電話しなければ プルルルルル♪

「あ、もしもし?」

「生まれた?待ってたよ!時間かかったね!」

いや、じつは…こんな感じで…

説明すると また泣きそうになったけど ママ友ちゃんが先に号泣してた。

みんないい人達だね♪

自分の友達には細かいことは言わずに 生まれた事だけ報告した。

もう外は完全に夜で 産科に行くと看護師さんが観察室で 休んでいいと言ってくれた。

21時頃だったかな NICUの看護師さんが来てくれた。

「処置も終わって赤ちゃん落ち着いてます。見に来ますか?お父さん」

お父さん…?俺か!バタバタしすぎて実感ないわ 。(笑)

赤ちゃんとご対面か…

あんなに頑張ったママちゃんより先に見てもいいのかな…

ママちゃんは相変わらず起きる様子がない。

でもママちゃんが起きた時に説明できるようにしてないとな…

「わかりました。行きます」

看護師さんとエレベーターに乗りNICUへ

ガウンを着てキャップをかぶり 手洗いを教えてもらって いよいよ中へ

NICUの中は うちの赤ちゃん含めて7、8人は いたかな。

小さい子もいるし、普通の赤ちゃんサイズの子もいる。

心電図の音がいくつも聞こえる。

みんな頑張ってるね…

テレビでしか見た事が無い世界。

小さい命が必死に頑張っている。

みんな元気になれ…

看護師さんに案内してもらって うちの赤ちゃんの保育器の前に

初めて見る我が子は チューブがいっぱいついてたけど 一生懸命生きてた。

涙が溢れそうになった。

おめでとう

ちゃんと言ってやれなくてごめんな。

それと

ごめんな

それしか出てこなった。

涙が止まらなかった。

「赤ちゃん苦しかったみたいで、お腹のお水いっぱい飲んじゃったみたいです。」

「今はもう落ち着いてます。」

「今回はお父さんも大変でしたね。」

「赤ちゃんも頑張りました。えらかったですよ!」

声を出せず、うなづくしかできなかった。

一言だけ声を絞り出した。

「よろしくお願いします…」

頭をさげて お願いした。

それしかできないもんなー

ママちゃんの第一声…

観察室に戻ってきた。

ママちゃんに教えてあげたいな。

赤ちゃん頑張ってたよって 早く教えたいな。

またママちゃんとくだらない話したり、喧嘩したりできるのかなぁ…

はやく目を覚まして欲しいなぁ…でも後遺症があったら…

気持ちがグルグルしながら ずーと心電図の音と寝てるママちゃんをぼんやり眺めてた。

時間は23時過ぎてたと思う。

もう8時間ぐらい経った。不安しかない。

「ママちゃん?」

小さく声をかけてみる。

……

反応なし。

看護師さんには 起こさないでくださいって言われてたけど、この時間は辛すぎるし、もう限界だし 無理。

「ママちゃん?」

軽く腕をポンポンしてみた。

「ん…う……」

反応した!!

よっしゃー!

叫びたいぐらい嬉しい。

「ママちゃん!」

結構デカい声(笑) まぶたが開きそう。

ナースステーション直通のドアを開けて

「看護師さん!起きそうです!」

起こしたのに、起きそうって嘘ついてしまった(笑)

看護師さんがやってきて 声をかける。

「大丈夫かなー?頭痛いかなー?」

「は…い……」

返事した!

返事した!

返事した!!

キターーー!!!

神様!!

ありがとう!!

体温とか色々チェックして 何かあったら声掛けてくださいと 出ていった。

ボーッと天井を眺めてるママちゃん。

表情が虚ろで また不安になる。

1時間ぐらい沈黙があった。

ママちゃんが背中を起こして またぼんやり。

そしてママちゃんが一言

「赤ちゃんは?」

喋った……

あの時は嬉しかったと言うか 安心したと言うか よくわかんなかった。

でも起きたら なんて言おうと思ってた質問がすぐにきた。

「赤ちゃんは…ちょっとしんどかったみたいだけどNICUにいるよ。」

「会ってきた。頑張ってたよ。大丈夫」

ママちゃんには まだ表情がなかったけど会話できた。

またしばらくぼんやりして…

「赤ちゃん泣いてた?」

う…その質問は想定外だ。

えーとチューブがいっぱいだなんて言えないから 嘘ついた。

「泣いてたよ!」

「そっか…」

またぼんやりしてるけど、会話もできたし もう安心した。

「今日はもう寝たら?」

と言うと素直に横になったママちゃん。

Daddyも寝ようと思ったけどアドレナリン出まくりなのか 寝れなかった(笑)

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