2021春⑥ 診れない 筋ジストロフィーの息子と共に生きる父のブログ

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筋ジストロフィーの息子と共に生きる父のブログ 2021春第6話

転院する覚悟

VT心室頻拍を起こし、小児科で診るのが難しくなったふー君。

集中治療室や大学病院、その他近隣の設備の整った病院に受け入れ要請が
始まった。

先生方が 病室を出ていった後、
なんだか偉いことになっちゃったなー

って言葉には出さないけど、
しばし無言の3人。ママちゃんは

「仕方ないわ」

と言いながら荷物を整理し出した。

今晩、どこの病院に転院になるかは
まだわからない。

小児科の先生方は 病室を出た後
相談してくれていたんだろう。

Daddyは転院になるかも知れないとの事で車をとりに自宅に戻った。

しばらくして、担当医が病室に
来てくれて、

「お母さん お父さんは?」

「準備をしに一度家に帰りました」

「そうですか、ちょっとお話があるので、来てもらえますか?」

「はい」

ママちゃんは あーとんでもないことになったんだ。と思ったらしい。

昔の(か弱く可愛い)自分とは違う。
しっかり現実を受け止めて 受け答え
できますように………

と思いながら、覚悟を決め担当医の
後ろをついて病室を出ようとした時。

その話を聞いていたベッドの上の
ふー君が

「ここで話せーへんの? 別室?? 絶対 あかんやつや~~~ん!」

と 叫んでいたらしい笑

ママちゃんも、さすがに笑えなかった 笑

カンファレンス室で

別室で 担当医の話が始まる。

担当医の先生、今日は日勤だった
はず。

勤務時間はとうに過ぎているはずなのに、ふー君の状況をしっかり説明してくれる。

病院に戻ってきたDaddy。
病室に一人残るふー君に

「あれ?ママちゃんは?」

「担当医の先生と話ししに行ったよ」

「あ、そうなん。じゃぁちょっと参加してくるわ」

「は~い」

その時はあまり思わなかったけど、
不安だったろう。

ナースステーションに場所を聞きに
行く。

今日はふー君の同級生ママが当直の
医師だった。

入口まで案内してもらい
カンファレンス室に。

ママちゃんと二人で話を聞く。

担当医の先生は一つ一つ言葉を
選びながら説明をしてくれた。

VT心室頻拍のちゃんとした説明、
もしVTの状態が長く続けば心臓マッサージや

場合によっては電気ショックを使う
場合もあり得ると言う事。

そしてこのまま この小児科ではみることができないこと。

大学病院の担当医にも指示をあおいでいるが 前回の気胸の時の退院から
2週間経っていないので今晩の再入院は難しい事。

コロナ渦で病床を200床 確保しなければならないため 受け入れ調整に時間がかかる事。

大学病院からの情報で 近隣に
筋ジストロフィーに詳しいドクターがいる病院があると情報を頂いたが、
そこには循環器のドクターがいない事。

この医療センターの集中治療室のベッドは 空きがあるが 一晩だけだという事。

なんせ コロナ渦の真っ只中。

思うように転院の話が進まないのだ。

ママちゃんは 黙って聞いていた。

涙も出さない。

先生の話を聞きながら、とうとう普通の病院では受け入れが難しい状況になってしまった。

みんなと同じように体調が悪い時、
普通の病院に通い普通に診察を受ける事ができなくなった。

それが凄くさみしかった。

「ふー君の前で色々 話をしてすいませんでした。本人の前でけっこう 踏み込んだ話をして…」

「いえいえ!そんな!先生のお気持ちは分かってますので、先生、本当にありがとうございました。」

「先生。日勤なのに こんな時間まで
すいません。ありがとうございました。」

今までの色々な事が頭の中をグルグル回った。

専門外のほぼ成人であるふー君の事を一生懸命支えてくれて何度も何度も
大学病院へ問い合わせをして治療してくれた先生。

これ以上はわがままになると思った。

だから今までの感謝の気持ちを込めてお礼の言葉を伝えた。

ママちゃんも同じ気持ちだったのかな。

最後にもう一度

「ありがとうございました。」

「ありがとうございました。」

お別れの意味を込めたお礼と挨拶を
してカンファレンス室を出た。

気になるふー君

2人で黙って廊下を歩き病室に戻る。

待っているふー君

「ヤバいやつやろ?オレ、どーなん?」

と、さすがに不安そう。

「いや、さっき病室で聞いた話と
ほぼ同じやで」

「心臓がしんどくなって、また夕方の時と同じことが起こったら
電気ショックをせなアカンかもって」

「ここでは、スタッフの数も足りないし、緊急の時の対応が困難やから 転院することになるって。そういう話や」

黙って聞いていたふー君

「そっか、それはしゃーないなぁ…。」

この小児科の担当医の先生のことが
大好きなふー君。少し淋しそうに言った。

どこで 診てもらえるのかなぁ

このまま 診てもらえるところが見つからなかったらどうしようと思いながらママちゃんは黙々と荷物をまとめていたそうだ。

受け入れ先は…

しばらくして、小児科の部長先生
(同級生のママさん先生)が病室に
来てくださった。

「担当医から 病状の話は聞いたよね。頑張っていこう。あれから色々受け
入れ先をあたってたんだけど」

「はい、どうなりましたか?」

「色々な所に要請したんだけど、どこもコロナの為に転院がなかなか厳しい状態です」

「はい」

「だから今晩もこの病院で診ます。
当直も頼りない私ですけど、何かあれば他の科のドクターにも駆けつけてもらえるようにお願いしました。」

そういっていると、集中治療室から
ドクターが 病室に挨拶に来てくださった。

「今日の当直の 〇〇です。小児科には来たことがなかったから 下見に笑。
何かあったらすぐに 駆け付けて、心臓の処置するからね」

と優しく ふー君に声をかけてくださった。

小児科の部長先生は にっこり笑って

「頼りないけどごめんね。集中治療室の〇〇先生も すぐに来てくれるからね。心強いね。絶対大丈夫だから!」

その他にも色々な先生がバックアップをしてくれる。黙って聞いていたふー君

「なんちゅー心強さ、これぞ アベンジャーズ…………」

またしばし沈黙の後、病室の中は
失笑…。アベンジャーズネタ 2回目の夜。

ハート強いな 息子 笑

長い長い夜

不整脈のあった夜 この日は転院せずに 小児科で診てもらえることになったのだった。

その日の夜 付き添いは1人までなのでママちゃんは病室。

Daddyは、 病院の駐車場の車で寝る
ことにした。

自宅にいる、すけまるとラブ子は、
中学生と小学生。

手はかからないが 一晩 子どもだけにはしておけないので、ママちゃんの
お姉さんが 泊まってくれていた。

その日の夜も 心配で不安でママちゃんは 眠れなかったそうだ。

慣れなければ…

これからきっと 色んなことが起こるたびに 不安で心配で押し潰されそうな
こんな気持ちと これからも 付き合っていくことになる。

慣れないと…慣れないと…。

爆睡する ふー君をみながらずっと
そんなこと思っていたそうだ。

その日の夜、なにもなく朝を迎える
ことができた。

恐ろしく長い夜だった。

次の日の朝、担当医が来てくれて

「何もなくて良かった。これからは
小児科だけじゃなくて循環器の
ドクターにも入ってもらって診て
もらおう」

「まずは心臓の薬を1つ増やそう。
後は点滴で 不整脈を起こさせないようなものを入れよう」

という内容の話だった。

前回の気胸の時は 小児科に 呼吸器も
なかったけれど、二度目の縦隔気腫の入院時、病室に運ばれた時には 部屋にはふー君のために呼吸器を用意してくださっていた。

縦隔気腫も治り始め、次の日からは
循環器科のドクター、縦隔気腫の状態を診てくれる 救命救急センターのドクターと、呼吸器の管理をしてくれる技師さんが 代わる代わる覗きに来てくださって、小児科の担当医がコーディネーターになって ふー君を診てくださった。

看護師さんも 慣れない呼吸器のことを 勉強してくれた。

ふー君が不整脈の時、スゴい勢いで
病室に入ってきてくれた看護師さんが

「偉い心臓やね。薬1つ増やしたら ちゃんと落ち着いて」

と言ってくれた。看護師さんたちも
すごく優しいのだ。

幸せものだね。ふー君。

目の離せないこの入院中、ずっと付き添っていたママちゃんの心の中は変化したようだ。
今回のような気持ちに慣れるのではなく、強くなろう って。

大人たちは常にピリピリして様子を
見ていたけど、このまま無事にVTを
起こすこともなく退院することができた。

2021年春 2回目の入院の話。

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