2021春⑤ 心室頻拍 筋ジストロフィーの息子と共に生きる父のブログ

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筋ジストロフィーの息子と共に生きる父のブログ 2021春第5話

負けないぞ宣言

縦隔気腫になり 入院生活になったふー君。

血液検査で二酸化炭素濃度が高かった。取り込む酸素、吐き出す二酸化炭素濃度。

いわゆる換気ができていない状態。

このままではいけないという事でネーザルハイフロー療法を始めた。

高流量の酸素を流し体内に溜まった二酸化炭素を吹き飛ばし 尚且つ酸素投与もできる。

難点は暖かい風と高流量の風。酸素マスクを装着するみたいな治療。

ネーザルハイフロー療法をしながら1晩夜を超える。

付き添いはママちゃんがしてくれた。

夜中も 結構な風の音。ママちゃんは心配で夜通し様子を見てたらしい。

夜中に看護師さんに、この治療を止めて欲しいとふー君が頼んだ。

暖かい風と鼻からの風量がすごく辛かったみたい。

でも、当直の先生の判断は 頑張れ!だった。

ふー君は1晩中 ネーザルハイフローと戦いながら、ママちゃんに

「寝ていいよ、寝ていいよ。くそーー!俺は負けへんぞーーー!!」

とママちゃんに声をかけながら 一睡も出来なかった。

ふー君はママちゃんに気を使い、体位変換やお茶を飲ませてもらうのも、ママちゃんを起こさずに看護師さんに頼んでくれていたらしい。

付き添いして、息子がお世話してもらってるのに寝れるわけもなく

結局2人とも寝れなかった。

夜が明けて8時頃 体力も限界なのか ネーザルハイフロー療法をしながら ふー君がウトウトしだした。

「やっと寝れたねぇ…」

そう思いながら ふー君を見てたママちゃん。

10時過ぎに担当医が来てくれたときは、寝ていたふー君。

「あ、寝てるねぇ、ごめんね、血液検査するから血だけ取るね」

と声をかけられ、無意識でうなづいていた 笑

そこら辺は 慣れたふー君。返事をして またすぐグーグー寝てた。

負けないぞ宣言撤回

お昼前にもう一度来て下さり、その時にふー君が

「先生、これもう止めていいっスか。キツいッス。これ以外ならなんでもします。」

笑いながらだけど 辛かったんだろう。我慢強いふー君がお願いしてた。

「そっかぁ…止めるかぁ。」

血液検査の結果をペラペラ見ながら

「思ったより二酸化炭素も下がってないし、そこまで言うならじゃあ止めよう」

となった。

朝ごはんもお昼ご飯も ほぼ食べてない。

少しの水分だけ摂って、またウトウトしだす。

点滴は入れているものの 前日から ほぼ飲まず食わず そして寝不足。

一瞬起きて 一言二言話して、またウトウト。

その繰り返しだった。

夕方4時過ぎに また起きてベッドを起こしママちゃんと少し話してた。

「少しスッキリした?」

「んー さすがにちょっときついなぁ…」

「寝れるなら寝とき」

「そうやなぁ」

と会話をした後、またウトウトしだしたふー君。

その直後 モニターのアラームが鳴った。

初めての音

ピコーン!ピコーン!ピコーン!

モニターの警告ランプが赤く点滅。いつもと違うアラーム音にママちゃんは

「ふー君?ふー君?!」

声をかける。肩を叩き声をかける

「ん?…なに…」

一瞬でウトウトしてたふー君。ママちゃんの声に反応した。

すると看護師2人、日勤の先生が駆け込んできた。

「ふー君!ふー君!?わかる!?」

必死に声をかける。

「ん…はい…どうしたんスか」

ぼんやりしながら返事をした。

安心した様にホッとする先生達。

何が何かわからないママちゃんとふー君。

ふー君の状態をひと通り確認して、詰所に戻っていった。

寝不足で頭が回っていない2人。

まぁ仕方ない。

仕事が終わり、様子を見にふー君の病室へ。

コロナ禍だったけど、小児科に入院という事で 出入りはそこまで制限されていなかった。

病室に入ると ぐったりした2人。

ママちゃんから 今日の話を聞いていると 先生達が入ってきた。

緊張感の違い

担当医と副部長先生と他の先生も3人、そして、看護師2人。

「今日の夕方、約5秒間ですがVTが起きてしまいました。」

「ん?あ、はい」

何がなんだか わからないDaddy達

「良くない状態です。集中治療室にベッドを移した方がいいと思います。」

「1人スタッフが付いて、しっかり管理した方がいい状態です。」

「当院にも集中治療室がありますが、今 ベッドの空きがあるか確認しています。」

「夜間は 看護師 ドクターの数も少なくなって、この小児科では ふー君のモニターをずっと見れるスタッフの数も確保できません。」

Daddy達は ポカーンとしてた。ふー君本人も同じだった。

ウトウトしてたのは確かだけど、会話もしてた。

アラームの警告が鳴った時も、直前まで話してたし、声をかければ すぐ反応もした。

「もしまた VTが起きては ダメなんです。次、また起きたら集中治療室へ搬送するか、大学病院へ救急搬送します。」

先生達の緊張感のある表情に驚いてた。

「VTは心臓が動いていても、制御不能の状態です。ただ動いているだけで止まっているのと同じ事なんです。」

病室の雰囲気が一瞬で変わったのが分かる。

説明をしながら ふー君の表情を見て、言葉を止める先生。

先生達が神妙な顔で 重い空気が流れたその時、ふー君が一言、

「そこは アベンジャーズの皆さんになんとかしていただいて。」

思わず顔を見合わせる先生達。一瞬固まって苦笑いしてた。

お前が言うたらあかん 笑

と思いながら、病室を出ていく先生方に 深々と頭を下げた。

思いっきりスベってしまい 恥ずかしそうにしてたふー君。
ママちゃんだけが 笑ってた。
母の愛 かな………笑

もうちょい時と場合 考えなあかん 笑

このVT 心室頻拍が起こってから病院の雰囲気が変わっていった。

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