筋ジストロフィーの息子と共に生きる父のブログ 第12話
保育所に入って1年が過ぎた。
Daddyは新しい職場にも慣れてきた。
前の職場のように深夜になる事も無かったし 家族と向き合える時間も取れるようになった。
ママちゃんもパートをしてくれて職場にも慣れたみたい。
パート先にも友達ができてたし、保育所のママさんとも数人だけど 友達ができたようだ。
母親であり 妻であり そして1人の女性でありたいと言うママちゃんの希望にも近づいていたようだ。
ふー君は毎日保育所が楽しいようで イヤイヤ言うこともなく 通っていた。
新年度になり 新しい友達も入所してきたり 穏やかな毎日だった。
ある日 保育所からのお手紙が入っていた。
中身は 新年度が始まり 足腰を鍛える為にも今年度は山登り等をどんどん行って行こうと思います。
わぉ……やべーな
正直な感想(笑)
足腰が弱い子がいるからという理由らしく、
保育所行事の度にある保護者懇談会でそんな話をされたようだ。
うちの子やーん……
て思ってたけど 保育所には病気の事は伝えてなかったし
当然ママ友達にも話してなかった。
大学の教授先生には 使いすぎず使わなすぎずと 言われてたので、悩み所。
他所の保育所はどうなのか わからないけど、
市と連携して療育センターの先生達も定期的に保育所には来てたようだ。
うちの子だけでなく他の子の様子も見に来てた。
療育センターの先生も ふー君が気になると言えば気になるし
そうでもないと言えばそうでもない。
グレーゾーンだったらしい。
季節は春 気候もよくて 山登りには持ってこい。
電車で 数駅乗った所にある梅林目指して山登りをする。
大人の足で15分程度の山。保育園児だと30分はかかるかな。
山登りの日は 超軽量な靴 動きやすい服 がお決まりな格好。
その日は毎回 Daddyもママちゃんも仕事が手につかない。
その日はできるだけ早く仕事から帰って ふー君に山登りの話を聞く。
お風呂に入りながら 頑張った足をマッサージするのがお決まりになった。
「山登りどうだった?頑張った?」
いつもお決まりの質問。嬉しそうに山登りの話をしてくれる。
「来月も行くねんて!」
「おう、そうなんか 頑張れよ」
楽しそうにされちゃ仕方ない。
ギリギリまで やはり言わないでおこうと思った。
たぶん先生方も足に何かあるんだろうけど できるだけ尊重してくれてたのかな。
普段の保育所の生活等も ふー君の事を さりげなくフォローしてくれてるようだった。
山登りも何回か経験し、他の友達にもフォローされる場面も よく見かけるようになっていた。
その度に複雑だったけど でも 色々な経験もさせてあげたい。
そんな思いがグルグル回る。
秋頃になって ママちゃんが先生と少し話をする事になった。
話の内容は すごく言いにくいけど
ふー君の足に なにかあるんではないかと 言う話。
先の事を考え 早い段階でお医者さんに診てもらったほうがいいじゃないかと言う事。
仕事から帰って その話をママちゃんから聞いたときの率直な感想は
あぁ…バレちゃったかぁ(笑)
だった。
ママちゃんも同じ気持ちだったらしい。(笑)
1度お医者さんにって 言われても もうわかってるし わざわざ行く必要もない。
保育所にどう伝えるか 2人で作戦会議だ。
足が悪いのは もう誤魔化せないし、足だけで行くか 病名を伝えるか が議題だった。
ん~
・・・
・・・・・
・・・・・・・
んん~
・・
・・・
・・
・・・
結果
・・
・・・・
・・・・・・
筋疾患
で行こう。この判断もまた 賛否両論あると思う。
あくまでDaddy家の判断です(笑)
足が悪いだけでは説明がつかないので筋疾患で足が悪いと言う事にした。
絶妙な匂わせ(笑)
嘘はついてないはず(笑)
それを先生に伝えると
あぁ…やっぱり
って感じだったらしい。
そして 先生から 驚きの提案があった。
「今度の運動会前の保護者懇談会で他の保護者さん達に親御さんから 伝えてほしい」
「????へ?」
あくまで要望ベースだったけど、保育所側の判断。
なにか思うところがあるんだろう。
色々な保護者がいる中で 変に受け取られても 誤解を生むので 病名はやはり伏せることにした。
正直 先生が話してくれればいいのに…と内心思ってた。
ふー君と向き合う中で 常に 一生懸命 感謝を忘れず 前向きに生きよう
と言うのがテーマだったDaddy家なので 保護者会で話す事にした。
2人で行くか 話し合ったりして
「私がいくわ、女優になったらええんやろ」
のひと言でママちゃんに決まり。(笑)
1人で いざ出陣
かっこええ…と思わず惚れ直した(笑)
女優ってなんやねん…
なんか演技するんかな?(笑)
「足が悪いようなので、病院で調べてもらったら 筋疾患 という診断を受けました。」
「色々、お世話をかけるかもしれませんが、よろしくお願いします!」
いたってシンプル。
少し悲しそうに、でも胸を張って言うてきたよ。
泣いた方がよかったかな?・・・ニヤリ
と、ママちゃんから報告を受けたのだった。
保護者会が 終わって 声をかけてくれるお母さんや 何も言わないお母さん 反応は様々だった。
「わざわざみんなの前で言わないとダメだったのか」
と怒ってくれるお母さん達もいた。
卒園後に、本当は産まれた時から病気の事知ってたんだと
ママ友に話したら、その保護者懇談会の後、ふーくんのママすごい!
と噂されていたそうな(笑)
筋疾患の診断を受けてすぐあんなに気丈にみんなの前で報告して、
なんて人間できた人だろうって(笑)
なわけないよね(笑)
なんせ、産まれた時から知ってて4年も経ってるんだから。
親御さんたちに伝えて欲しい
という担任の先生たちの真意は分からないけれどDaddy家にとっては結果オーライだった(笑)
声をかけてくれるママも増えて、自分の子どもの持病の話をしてくれるママもいたそうだ。
みんな、いい人たちばかりだった。
保育所とお母さん達に ふー君の事を話して 少し楽になった部分もあった。
今までは 負けたくないとか まだ大丈夫とか 可哀想と思われたくないとか 色んな思いで過ごしてきたからだ。
山登りは 相変わらず続いた。
保育所には 使いすぎもだめ 使わなさすぎもだめ と 難しい事も 話していたので 駅までは 所長先生の自転車に乗せてもらう。
そこから電車に乗って山まで歩く。山登りは 山の中腹まで 頑張る。
他の子達は上にある梅林まで 頑張る。
帰りは駅までは 自分で歩いて降りて電車に乗り また自転車に乗せてもらうか 調子が良ければ 皆と歩いて帰る。
梅林まで 行かせてあげたいって やっぱり思う親心。
みんなと同じ世界を見せてあげたい。
山登りの日は休みをとって おんぶで上がるか?とか 考えたりもした。
でも ふー君は もうふー君の世界で生きてる。
いつかは治ると信じているから その世界は ふー君に任せようと思った。
秋の運動会は 相変わらず 激しい内容だった。
鉄棒だったり うんていに ジャンプしたり かけっこしたり 出来ない事だらけだった。
おじいちゃんおばあちゃん お姉さん夫婦に加え
この年の運動会は 同じクラスのママさんパパさんたちも
「ふーくん がんばれぇ!」
と声をかけてくれていた。
みんなの暖かい気持ちに 感謝感激の運動会だった。