筋ジストロフィーの息子と共に生きる父のブログ 2023 第24話
納得するまで、挑戦したいと言う本人の意思を尊重して
一回目のカンファレンス後に呼吸器の圧を上げてもらった。
微妙な数値ながらも 二酸化炭素と酸素の逆転は解消された。
と言っても いい数値では無い。
なんとか クリスマスに帰りたいと言う ふー君の頑張りもあったのかも知れない。
そんな中 また違和感を訴えたふー君。
検査してもらった結果、少し気胸が悪くなっていた。
呼吸器の圧を上げたせいなのか。
こちら側の無理な要望で上げてくれたのだけど、聞いてみる。
圧を上げたこと、それは直接的には関係してるとは 思えないと言う話だった。
これで クリスマスに帰ると言う計画は無理になった。
かなり凹んでいた ふー君。
彼女がいるなら わかるけど、彼女もいないのに そこまで帰りたい理由は……笑
色々と励ましのやりとりをした。
「なんで そこまで こだわるのか わからんけど、クリスマスは今年だけじゃないやん」
「来年も再来年もあるんやから、無理せんでええんちゃうか」
「それよりも しっかり 良い状態にして 帰った方がいいんちゃうか」
と声をかけた。
何故か こだわってたけど、そういう やり取りの中で そういう考え方もあるな。
と思ったようだ。
そんなこんなで ここ数年で気胸を繰り返し、呼吸器の使い方も変わった。
寝る時だけだったのが、24時間になったし、誤嚥する事も増えた。
食べ物もガラッと変わってしまったし、気切の話も 秒読み段階だ。
昔からの知り合いの同じ病気の保護者と話す事があった。
病気との向き合い方は 人それぞれ、家庭によっても違うと思う。
そこの家庭なら とっくに気切に踏み切っていると言う意見。
その方が本人も楽だし、苦しい思いをする事もない。
そこは親の権限で踏み切るべき。
たしかにそうなんだろうな。
そうなんだろう。
でも本人は納得してない。
そして 僕たちも まだなんとかならないと悪あがきをしてる。
頭では分かっているんだけど、なかなか決断できなかったし、勧める事もしなかった。
そういう家庭に生まれれば もっと ふー君は楽だったのかな。
身体も ここまで悪くならなかったのかな。
頑張れ頑張れ と言う俺が もしかしたら 悪かったのか。
追い詰めてしまっているのかも知れない。
そんな事を考える事が多くなった。
でも その都度 考え悩んで周りに相談したりして来た。
正解なのか どうなのか 誰にもわからない。
その時1番良いと思った選択をしてきた。
これで良かったんだ。
ぐるぐる そんな事ばっかり考える。
もう 気切をして 次に進むしかないとわかってても まだ考えるんだよね。
そうこうしている内に 時間は過ぎて お正月に帰れるかどうかの話になった。
良くなっていた気胸の穴が少し広がっている。
二酸化炭素と酸素の逆転現象もまた起こった。
やはり お正月も帰宅は難しいと判断になる。
あっという間に年末、そしてお正月が過ぎていった。
年末は電話を繋いで貰う許可をもらって紅白歌合戦を一緒に見たりした。
年が明けて、3週間 少しずつ 前向きに考えていくようになった。
そんな中、これからに向けて 僕たち夫婦とふー君。
訪看さん、ヘルパーさん達、そして病院の関係者でカンファレンスをして頂く事になった。
家族以外はオンラインで繋ぐ。
病院側も なんとか家に帰す事が出来ないか 模索してくれていたそうだ。
師長さんが 先生達に掛け合ってくれたり、色んな話を聞いた。
そんな中で断念した理由は、やはり病院との距離。
高速を使って約1時間。
そこがネックだった。
何かあった時に病院までたどり着けない。
途中の中継地点で救急対応してもらう病院も探そうとしてくれていたそうだ。
でも、不測の事態が起きた時に 挿管が出来ないのではないかと言う事。
筋ジスの子の挿管は慣れていないと難しいんじゃないかと言う先生の意見。
看護師さん達は 中継地点の救急で挿管さえしてもらえれば 運ぶ事が可能だと考えてくれた。
しかし、先生の意見は そもそも挿管が難しいと、言う事だった。
そこまでのリスクを犯して帰る事は正しいのか。
何かあっての後悔よりも 気切をして しっかりした状態で家に帰る。
そこを目指すべきなんではないかと言う意見だった。
うなづくしか できなかった。
そして、そこまで今の状態は悪いって事でもある。
関係者の皆様が色々考えてくれたこと、改めて断念した理由を聞いた。
そこで もう無理なんだと思ったし、ふー君も諦めがついたようだ。
そして 気管切開後の自宅での受け入れ態勢を専門家同士で意見交換をしてくれていた。
このカンファレンスの 次の日はママちゃんの誕生日だった。
カンファレンスの前に看護師さん達と サプライズを仕込んでくれた。
本当に驚いた。
ふー君がカンファレンスの最後に先生に聞いた。
「夏には帰りたいんですけど それなら いつやればいいですか」
「それなら もうやった方がいいね」
看護師さんが 間に入る。
「そうやね!いついつまでに帰りたいから そこに合わせる」
「それでいいと、思うよ!」
「前向きな目標だよ!」
「声のリハビリして ご飯もリハビリして 帰ろう!」
みんなで盛り上げてくれていた。
支えてくれる人達の準備は整いつつある。
あとは本人と僕たち次第だ。