筋ジストロフィーの息子と共に生きる父のブログ 2021第18話
排痰トラブルが頻発して、前回の入院で話が出た排痰補助装置をお試しする事になった。
正直、排痰で行き詰まっていたので ホッとした部分もある。
普通なら2,3日から1週間程度の入院。
排痰の事で困っている事を伝えると どうすれば詰まるのか、しっかり見ていこうとなった。
病院の医療機器で新しい機器が導入されたらしい。
二酸化炭素を耳たぶで測定できる優れ物。
今までは血液検査でしか わからなかった。
寝てる間や様々な場面で二酸化炭素を測定できる。
家庭でも欲しいとママちゃんが言うと、車が買えるぐらいするそうな 笑
医療機器って やっぱり高いよね。
ちなみに測定精度は まだ不確定で これからのデータ積み上げになるそうな。
今のところ 参考程度の使い方らしい。
今回の入院、同部屋に同じ筋ジストロフィーで車椅子サッカーの先輩がいる。
大部屋で色々と話もできるみたいで、楽しそうだった。
入院して 直ぐに取った血液検査、二酸化炭素の数値がよろしくなかった。
念の為 数日経ってから 再検査したけど やはり高いらしい。
担当の先生から ふー君に気管切開の話が出た。
その話を聞いて、お試し入院で なんとなく油断していた僕達は結構ショックだった。
仕事をしていると病院から電話があった。
排痰で困り入院して様子を見たけど、確かに痰は多いけど詰まるほどではない。
それよりも二酸化炭素が高い。
カンファレンスにかけたが、満場一致で気管切開をした方がいいとなっている。
できれば、今回の入院でこのままと言う話もある。
1度、ご両親、本人を混じえ話をしましょうとなった。
まずは ゆっくり考えてからと思い、
帰宅してから まずはママちゃんと話し合い。
そして ずっとお世話になっているお姉さん夫婦にも相談した。
まぁ なんとも言えないけど、やりたくないし、
まだ大丈夫なんじゃないかと言うのは 皆 同じだった。
あまりに急過ぎるし、もう少しなんとかならないかと考えたし、ふー君もそうだった。
仕事をしながら 色々考える。
した方がいいのか、まだ頑張るのか。
先生との話し合いの日まで、ずっと考えた。
排痰で苦しむ ふー君を ずっと 見てた。
気切した方が楽になるんじゃないか
好きなこともやれるんじゃないか
親として、父親として どう決断すればいいのか。
治るのを信じているのは変わらない。
けど、進行しているのも確か。
今、やるのがいいのか、まだ頑張るのか。
同じ事をぐるぐるぐるぐる考えた。
でも、よし! やろう! と言う気持ちにはならなかった。
先生との話し合いの日が来た。
今回はやらないと 心の中で 迷いながらも決断して、病院に向かう。
いつも、お世話になっているヘルパーさんも参加させて欲しいとの事で、同席してくれる事になった。
ヘルパーさんと現地で待ち合わせして、カンファレンスルームに案内される。
約2週間ぶりに ふー君とご対面。
久しぶりだったけど、元気そうで安心した。
僕達 両親とふー君。ヘルパーさん。
「おい、元気かよ~おらおら」
と ふー君をいじりながら先生達を待っていた。
そうこうしているうちに全員揃った。
担当の先生と看護師さんで話が始まる。
先生からの説明が最初。
排痰トラブルは 病院ではやはり起きない。
入院して、数回 二酸化炭素を測ったけど、数値が60オーバーで良くない事。
気管切開を考える時期だと思う。
早ければ早い方がいい。
あまり時間の余裕はない。
今回の入院でそのまま、もしくは 年明け早々にでも考えた方がいい。
今後、何かあった時にも 気管切開は必要になってくると説明があった。
大きなリスクとしては声が出なくなる。
本人さんはコミュニケーションを取る事が上手なので、一番のリスクとしては
その点だと思う。
一気にピリっとしたムードになった。
「大体はご両親から聞いてると思うけど、ふー君はどう思う?」
と先生が まず ふー君に聞いた。
「気管切開が必要なのは話を聞いてわかりました。」
「いずれはやらなければいけないのは分かっています。」
「でもまだ、やれる事はあると思うし、もう少し頑張ってちゃんと考えてから決めたいと思います。」
「鼻マスクでご飯も食べれるように練習して呼吸器を着ける時間を延ばして頑張りたいです。」
全員がふー君の気持ちを聞いていた。
真横に座っていた僕からは、表情を見ることはできない。
どんな顔をして話してるんだろうと思いながら聞いていた。
いつまでも子供だと思っていたふー君はしっかり自分の気持ちを話している。
もう20歳になってたんだよなと、ぼんやり考えていた。
子供の人生に関わる事だから間違ってはいけないとずっと考えていた。
自分がしっかり考えて決断しないとと悩んでいた。
ふー君は自分の身体の事を考えて自分なりに答えを出していた。
すこし気持ちが軽くなった気がした。
ふー君の身体なんだし、人生なんだ。
成長したなぁと思い嬉しかった。
「ご両親はいかかですか?」
いつも、何を言おうとか考えて準備はして行かないタイプ。
思ったことを話す。
「正直、僕達はまだ受けいれて決断することはできません。」
「いずれ、やらなければならないとは思っています。」
「子供の身体にメスを入れると言うことにも抵抗があります。」
「今は本人がまだ頑張りたいと言う気持ちを応援したいと思います。」
「今回の入院で気管切開はしません。」
「このまま退院してから、ゆっくり話したいと思っています。」
「わかりました。」
先生は少し微笑んで答えてくれた。