筋ジストロフィーの息子と共に生きる父のブログ 2021春 第9話
いよいよ専門病院に受診する日がやってきた。
呼吸器の疾患や神経の疾患、そして整形外科等の診察、治療、リハビリ等を行う病院だ。
生後半年以来の受診だけど、何度か親の会等のイベントや進学相談等には参加した事がある。
ヘルパーさんと一緒に専門病院へ向かう。
駐車場には大きめのワンボックスが並んでて だいたいがウェルキャブ仕様。
車椅子の方がたくさんいるんだなぁと思いながら 駐車場でふー君を降ろして玄関へ向かう。
似たような年頃の車椅子の青年がいた。
体育会系っぽいその子のパパさんが
「こんちゃーすっ!」
と挨拶してくれた。こちらも負けずに
「こんちゃーすっ!」
こういうのは気持ちいいよね。
難病を抱えてても 気持ちで負けてなるものか という気合いが感じられる。
右も左もわからず 受付を済ませて 待合室へ。
車椅子の方や杖をついて歩く方、特に何も無さそうな方。
みんな色々 抱えてるんだなぁ なんて思いながら 座って待つ。
予約時間は13時。先輩ママさんからは 予約時間は あってないようなもの。
早い人から 診察だし 早めに行った方がいいとアドバイスをもらっていた。
退院してから 酸素飽和度を測るセンサーを足につけているふー君。
こまめに数値を確認すると95前後を行ったり来たりしている。
「診察室に入ったら 気合いで数値上げとけよ(笑)」
「最初が肝心や」
「わかった。全集中しとくわ」
鬼滅の刃が流行ってたからね (笑)
予約時間の30分前に着いていたけど なかなか呼んでもらえない。
13時半頃に呼ばれた。予約番号は1番。
「ピンポンパンポーン」
「………い……ち…ボソボソ……お…入り……ボソボソ」
声も小さく聞き取れないようなアナウンス。
「いま、呼ばれた?」
「たぶん…」
「え、違うやろ」
なんてヘルパーさんも含めて モゾモゾしてたら 看護師さんが
「1番の方~ お入りください」
「呼ばれてるやん(笑)」
「今の聞こえてましたー?」
「いや、ほとんど聞き取れなかったです」
「先生、ちゃんと呼ばないと聞こえてませんよ!」
看護師さんに先生が怒られてた。
ママちゃんは この先生のアナウンスに
「あ~…絶対変な先生だ~」
と意気消沈してた。(笑)
Daddy、ママちゃん、ふー君、ヘルパーさんの4人でゾロゾロと診察室へ。
コロナ禍で密になるので 断られるかも知れないと思っていたけど、スルーだった。
医療センターからの手紙、大学病院からの手紙を先生に渡す。
難しそうな顔をしながら 書類をじっくり読んでいる。
みんな黙って様子を伺う。(笑)
一通り読み終えると パソコンに色々入力していく。
静寂の時間が長かった。(笑)
すると先生は、看護師さんを呼んで
「19年前のカルテある?紙カルテやなあ。なんか 名前に見覚えが…。」
19年前、ふー君はまだベビーで、先生がふー君の身体の診察をしてくれてる間、先生の首から下げていたぷらぷら揺れる聴診器を小さい手で触ったりしていた。
あの時と同じ 先生なんだろうか…。
人との巡り合わせのスゴいスキルを持っているふー君ならあり得る。
結局、当時の紙カルテは昔過ぎて見つからなかった。 残念(笑)
簡単な問診が始まる。気胸や縦隔気腫、誤嚥性肺炎を起こした事。
ふー君の身体を診察しながら 常に難しそうな顔。
重い雰囲気が続く。酸素飽和度は90前半(笑)
チラチラと数値を確認するDaddyとふー君。
「医療センターで見てもらって、定期的に大学病院に受診…ふむ…」
「大学病院の先生はよく知ってますよ」
「結構よく会いますからね」
「呼吸器の設定とかを ここでやるのかな? それなら 定期的に通ってもらわないといけなくなるけど 大丈夫? 」
「はい!大丈夫です。」
「医療センターでは診てくれないの?」
「まぁ専門ではないので、難しいと言う話になりまして」
「そうなんだ…医療センターなら診れると思うけどねぇ…」
頭をポリポリ掻きながら
「う~ん。」
「うちに来るのは全然いいんだけど、イニシアチブをどうするのかなぁ」
「大学病院の先生は なんて?」
「この専門病院なら、呼吸器の設定も薬のことも きちんと入院してしっかり診ながら設定してくれると思う。とおっしゃっていました!」
「じゃあ うちがイニシアチブを取って 進めて行って 良いってことかな?」
「そうですね、それでお願いします。」
「大学病院にも通うの?」
「はい、大学病院には、半年とか それぐらいの頻度で通おうと思ってます。」
「研究とか新しい治療とかの話を聞きたいので」
「問題ありますか?」
「いや、それは全然大丈夫です。こちらがイニシアチブ取れるなら 問題ないです。」
「ちゃんと確認しとかないと、どちらの話を聞くとか、問題が出る場合もあるんでね」
「そうですね、急性期と慢性期をこちらでお願いしたいと思います。」
Daddyは強面なのか、あまり目を合わせてもらえないことが多いが(笑)、専門病院のドクターは しっかりDaddyの目を見て話をしてくれる。
「じゃあ、うちで 経過みてこっか。それでいいかな?」
「はい、よろしくお願いします」
正直 受け入れてもらえないかと思う雰囲気だった。たぶん みんな同じ感覚だったろうな。
全員が深々と先生に頭を下げていた。
「検査入院して詳しく検査させてもらわないといけないけど、いつ頃がいいかな?大学はいつから休み?」
「大学は8月の半ばから9月の終わりまでです。8月のあたまは、試験があるので。」
ふー君が答える。この時は6月初旬だった。
「……結構、先やね…。」
「まぁ とりあえず、1週間後にでも 呼吸のリハビリに1度来てもらって、その時に検査入院の手続きをして帰ってもらおうかな。」
「アンビューバックは持ってる?」
「今後使うことになるだろうから、リハビリで使い方も指導してもらって帰ろう」
その後は、今 疑問に思っている質問を、ヘルパーさんもたくさんしてくれて 嚥下機能検査の話にもなった。
「嚥下機能検査は してるんやけど、今は入院してやってもらってるから、検査入院の時に一緒にしようか。」
「あと、ここで今後も経過を診て行くなら 一通り検査させてね」
と言う事で そのまま 色々検査に回った。
結局初診の僕達に2時間近く時間を割いてくれた。
呼び出しのアナウンスの印象は悪かったけど、ゆっくりと話を聞いて 分かりやすく答えてくれたし、時折 見える笑顔が 優しい印象の先生。
パソコンの画面ではなく、しっかり目を見て 受け答えしてくれる先生だった。
一通り検査を終えて 先生と話をして 帰ろうとした頃には もう17時をとっくに過ぎていた。
帰ってから 先輩ママさんに報告。先生の印象等を ママちゃんが話してた。
先輩ママが言うには その先生は部長先生で 担当医の指名は 出来ない病院なのに、
「待ち時間が長くても〇〇先生に看てもらいたい」
と人気の先生だそうだ。凄くラッキーだね!と言われた。
第1印象は 悪かったけど(笑)、良さそうな先生に初診から看てもらえた事は 素直に良かったと思った。
ふー君は 何故か いい人に巡り合える運を持ってる気がする。
今度は1週間後に受診する。続く…