第36話 筋疾患の難病 筋ジストロフィーの息子と共に生きる父のブログ 告知

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筋ジストロフィーの息子と共に生きる父のブログ 第36話

伝えるかどうか

病気がわかってから ずっと考えていた事がある。

ふー君 本人に病気の事を
どう伝えるか。

自分なら知りたいか

知らない方がいいか。

んーむ…自分なら知りたいなぁ…

もし…もしもだけど、人より使える
時間が少ないならば 後悔のないように生きたいと思うから。

でもそれは僕なら と言う考えで
ふー君自身は どうして欲しいんだろう。

ふー君が生まれた当時、病気の事を
調べると20歳前後で どうとか書いて
ある。

そして、6年生になった時には、
少しずつ治療法の話もあったし、
呼吸器等を使って40歳を過ぎても
頑張っている人もいる。

小さい頃は少し足が悪いんだよ。

大丈夫、絶対治るから。

と言って育ててきた。

足 早く治んないかなぁと言う言葉に
困ったりもあった。

そして、走れなくなり歩けなくなり、車椅子に乗るように。

そして 足だけではなく、
腕が上がりにくくなったり。

足だけで通すのも限界がある。

リハビリや病院で、大人の話を横で
聞いている時もあった。

その度に ふー君はどう思っているの
だろうと考える事もある。

いつまでも なんとなく過ごして行くのは もったいないと思っていた。

もしかして、時間が少ないならば
伝えるべきなんだろう。

迷いに迷う

時期については色々考えたけど、
僕は中学生になる前に伝える事に
した。

ママちゃんには、なんとなく話した。

2人でゆっくり話ができる入浴中に
それとなく話を始めた。

「最近学校はどう?」

と雑談から始める。

伝える事が本当に息子にとっていいのか、このタイミングでいいのか。

話せば、どう受け取るのか。

辛い顔をするのか。

なげやりになったりしないだろうか。

自分で知りたいタイミングでネットか何かで知る方がいいのか。

それまで黙っている方がいいのか。

この思考を何度も何度も繰り返して
きた。

楽しい事も辛い事も一緒に抱えようと思う。

だから大丈夫、これからも頑張ろう。

これからも これで押し切れるのかな…

伝えたいと思うのは、
僕のエゴなんじゃないか。

自分が楽になりたいだけなんじゃないか…

まだ6年生 受け止める事ができるのか…

グラグラ気持ちが揺れる。

だけど、こんな大事な事だからこそ
親の僕の口から表情を見ながら、
丁寧に話そうと思った。

やはり伝えよう

お風呂の中では なんとなく雑談に
なってしまったので、仕切り直し。

お風呂に入った後に寝るまでに時間があった。

「なぁ、ふー君 身体の事でちゃんと話しよう」

「なに〜?どしたん?」

突然 言われても何の話かもわからないよね 笑

「もうすぐ中学生やし、病気の事
ちゃんと話しとこうと思って。」

「だから、真面目にちゃんと聞いて
欲しい」

「わかった」

「ふー君な昔、走ったりしてたやん。保育園のリレーも大変やったけど、
頑張ってたな」

「自転車も頑張って乗ってたし」

「それが走られへんようになって、
歩かれへんようになって。」

「今は車椅子が足の代わりに
なったやん」

「うん、なんか足がカクンッてなるし、ようコケてたなぁ」

「そうやな、でも頑張って歩いてたな。傷だらけの膝して。」

「とうちゃんは あの膝が
大好きやった。今も覚えてるよ」

「何回も同じとこ打つねん。
めっちゃ痛いねんで」

「転んだら痛いとか、大事な事やと思う。
痛みを知るって事は本当に大事な事、体の痛みも心の痛みも忘れんといてな」

「んで、車椅子に乗るようになったやん」

「うん、コケへんようになったし、
楽しいよ」

「ずっと足が悪いって言うてたやん」

「それは筋ジストロフィーって言う
病気でやねん」

「聞いたことあるよ、そうなんや〜」

「その病気はな…」

と病気の内容をゆっくり丁寧に
説明した。

ママちゃんも黙って座り、
聞いている。

筋肉の病気である事。

だんだん筋力が弱くなっていく事。

歩けなくなり、
手も使いにくくなる事。

呼吸の事、心臓の事。

もしかしたら、時間が短いかも知れない事。

この事を話した時は少し涙を流してしまった。

ふー君はびっくりしてたな。

どっちかと言うと泣いたことに

そりゃそうか笑

僕達がお医者さんに聞いてたり、調べた事、勉強した事を包み隠さず
説明した。

話してる最中も、これを言うべきか、これは止めておこうか、迷いながらだった。

何度も何度も言葉に詰まった。

辛かった。

なんで こんな子供が こんな辛い病気になるんだと 何度も病気を憎んだ。

いつもと違う雰囲気に ふー君も真剣に聞いていたと思う。

そして最後にふー君に伝えた。

必ず治療法ができると信じてる。

だから いい事をしたら褒めるし、
悪い事をしたら本気で怒る。

いつか大人になった時に、
自分で考えて行動できるようになって欲しい。

そのつもりで これからも接して行く。

もし万が一 時間が人より少ないならば

1日1日を大切にして欲しい。

今を一生懸命 生きて欲しい。

後悔のない人生を進んで欲しい。

と伝えた。

半分 親の願いもこもってる。

いや、ほぼ全部かな……

できる事なら 変わってあげたい。

それができないなら、一生懸命 生きる事を伝えよう。

逆に言えば それしかできない。

どれぐらい理解したのかは わからない。

伝えた事が良かったのか、
悪かったのか
これからも考えるんだろう。

ふー君に話した事で、今までよりも
真剣に向き合っていこうと決めた。

しばらくの間は ふー君の様子が
気になった。

伝えた日は ぼんやりしていたようだったけど、次の日からはいつも通りの
毎日だった。

大人になった息子に

そして、成人になって改めて この時の事を聞いてみた。

「告知した時の事、覚えてる?」

「覚えてるよ、ここでお風呂の後に話したやんな」

「そうやな、あん時 ぶっちゃけどう感じた?」

「んーどうやったかな」

「聞きたくなかった?」

「んーん、それはないよ。教えてくれてありがとうって思ったけど…」

「けど?」

「話は理解できたけど、納得は出来てなかったなぁ…」

「そっかぁ…自分の中でちゃんと病気の事 考えたんて いつ?」

「高校で1回 気胸で入院した時かなぁ」

「そん時に ちゃんと生きて行かなあかんなって思ったわ」

「ふーん…」

遅くね?と思ったけど 言わなかった。笑

告知をするかどうか 家庭環境や様々な状態で各家庭 違うと思います。

伝えるタイミングや言葉の選び方 本当に難しかったです。

今もちゃんとできたか どうかの答えはわかりません。

自分の子供に残酷な告知をする事が
無くなり この憎むべき難病、
色々な方を苦しめる病気や怪我が1日も早くいい方向に向かう日が来るように願います。

初めて 病気の事、これからの事をちゃんと話した6年生の話でした。

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