筋ジストロフィーの息子と共に生きる父のブログ 第21話
ふー君はと言うと基本 自分の足で歩く。
長距離は疲れない程度に歩き、疲れたら簡易的な車椅子に乗る。
通学は校門までDaddyが送っていくのが続いてた。
保育所から繋がりができた療育センターにもリハビリに通っていた。
作業療法士の先生(OT)や理学療法士(PT)の先生にも恵まれ いい先生ばかりだった。
療育センターで そろそろマイ車椅子を考えようと言う話が出てきた。
大学病院の先生も 楽しんで学校に行くのが1番大事と言う事、簡易電動なら手漕ぎでリハビリもできるし、準備してもいいとアドバイスをもらった。
療育センターに 色々なメーカーの車椅子デモ機を手配してくれた。
基本の形があって サイズはある程度調整できる。
身長もまだ伸びるし悩み所。
車椅子でもカッコつけよう!と派手な車椅子でもいいね!って話してた。
障害者手帳も申請済みだ。
色々制約はあるけど、補助も出るし 少しぐらい自腹切っても気に入った物を。
塗装ひとつとっても、別料金が発生する笑
ふー君は業者さんと、どんどん話を進めていく笑(まー格好良いのん作ったら良いけど笑)
悩んだ結果 簡易電動の車椅子で 色は赤メタリック ラメ入りにした。
ワインレッドのキラキラした色になった。
「おおおお、かっこええー」
発注を済ませ 後は数ヶ月後の出来上がりを待つだけ。
あまり 深くは考えてなかったけど、今のマンションだと通路が狭いし これからの事を考えると 住みづらい。
すると休みの日ママちゃんが
「〇〇町に結構広めの土地売りに出てんねん、見に行かへん?」
「へ?」
チラシを持ってきて 見せてくれた。
「ここ、いいと思えへん?ギリギリ校区内やし転校せんでええし」
え?土地買うの?家建てるの?って感じ(笑)
なぜかママちゃんは 珍しく積極的だった。
とりあえずチラシの不動産にママちゃんが電話してみる。
次の休みに見学する事になった。
「なんか動き早くない?どした?」
「いや、すけまると家にいるとセールスがめっちゃ来るねん、そろそろ考えなあかん思ってたし」
ふー君の事を考えたら ワンフロアのマンションがいいんじゃないか?とか考えたけど、Daddyは どちらかというとマンション住まいは苦手だ。
ママちゃんも 例のご近所トラブル(筋ジストロフィーの息子⑨)で一戸建てが良かったらしい。
休みの日、約束の時間に不動産屋さんに。
少し緊張しながら中に入った。
チラシを見た事を伝えて色々話を聞かせてもらう。
簡単に事情を話し、校区内で それなりに広めの土地を探している事を伝えた。
チラシの物件と その他何件か ピックアップしてもらい車に乗せてもらい現地見学をする。
他の物件は校区外でもあったし、似たような年頃の親が沢山の所もあった。
チラシの物件には、中古の建物もまだ建っていた。
「この建物はどうなるんです?」
と、聞いたら そのままリフォーム渡しでもいいし、更地にして新築でも どちらでもいいらしい。
更地にする費用は含まれてますとの事。
その日は家に帰りしばらく考える事にした。
時間帯を変えたり曜日を変えたり 何度か雰囲気を見に行ったりした。
それだけじゃ当然わからないんだけど そんなに問題は無さそうだった。
色々な人に相談しながら しばらく考える。
家を建てるってのは まぁまぁ覚悟いる(笑)
ブログだとあっという間だけど結構悩んだ。
車椅子で生活するとなると それなりに広さは必要だ。
もっと大きい家もあるだろうけど ここの地域で生活の基盤が整いつつあった。
めちゃくちゃ広いわけでもないけど、これ以上は収入の面で多分無理そう。
周りの雰囲気も悪くない。
交通の便もいいし、駅も近い。
よし、決めるか……
最終判断はDaddyに任せてくれてたママちゃんに伝える。
「あそこで建てようか」
少し嬉しそうに
「OK」
と返事をくれた。
とりあえず土地を抑える連絡をする。
更地渡しを希望した。
建物は その不動産屋さんのプランを見せてくれたり、他の不動産屋さんを見たり、展示場に行ったり休みの度に忙しかった。
結局、土地を購入した不動産屋さんのプランで建てる事にした。
不動産屋さんで、ながーーーーーーーい説明の後に 契約の印鑑を押す。
ほとんど聞いてなかったけど みんな聞いてんのかな?あれは…(笑)
そして銀行でも なんか豪華な部屋に通され 何枚も何枚も印鑑を押した。
ローンの額を見るたびに 苦笑いのDaddyだった。
家の間取りを考えたり、カウンターの位置やコンセントの場所、 外観、壁紙の色、お風呂や洗面台、建具、考える事がたくさん。
休みのたびにショールームへ行く。
ママちゃんは毎週 ご機嫌。
それを見てるのが幸せだった。
家にいるのは、ママちゃんの方が多いし、ママちゃんの好きなようにすればいい。
キッチンや水周りは もちろんママちゃんの希望。
壁紙やフローリングの色、トイレの色、そして家の外壁も……
「いや…俺もなんか決めさせろ」
「ええええええ……じゃあお風呂はええよ」
まぁ見える所は あとから どうとでもなるし それで良かったかな(笑)
と言われお風呂の壁面の色だけ決めた(笑)
なんで許可制やねん(笑)
1番考えたのは、ふー君が少しでも過ごしやすい家だ。
玄関までの階段はやめて、スロープに変更する。
車椅子で登れる角度を調べ工務店の監督と打ち合わせ。
将来的に車椅子になるし、簡易電動ではなく完全な電動車椅子にもなるだろう。
車椅子の重みに耐えれるように床を最初から補強の注文。
玄関ドアもドアではなく 引き戸に変更。
家中のドアを引き戸、もしくは折れ戸に変更した。
冷やすとダメと言われていたので、断熱材のグレードもあげた。
関西だけど雪国仕様レベルまで引き上げた。
もっと広ければ まだまだできたんだけど これ以上は断念。
一戸建てで、2階建てなので 2階にも行けるようにホームエレベーターを導入できるように スペースと補強をしておいてもらった。
まだ、導入できてないけど(笑)
いまは、以前書いたウォークインクローゼットに一時変更してます。
ある程度 仕様が決まり工事が始まる
ドキドキするやん(汗)
ママちゃんのお腹は また大きく、家の事でバタバタしてる間に ふー君の歩ける距離はまた少なくなっていった。
ママちゃんから聞いた夏休みの話
夏休みなど長期休みのたびに筋力が落ちる。
運動量がどうしても落ちる。
小学校2年の夏、スーパーで転んだふー君。
自分の力で立てなくなっていた。
スーパーの冷たい床に うつ伏せに転んだまま、ママちゃんが立ち上がらせようとしたら
ふー君が一言…
「母ちゃん、オレって生まれて来て良かった?」
ママちゃんは ビックリした。今まで、泣き言 ひとつ言わなかったふー君がそんなこと言うなんて。
「なに言うてんの~。生まれてきてくれて良かったに決まってるやろ~!」
って 涙を堪えながら 答えるママちゃん。
そんな役目はいつも一緒にいる時間が長いママの役目になってしまう。
ふー君が辛い気持ち、そんなふー君の気持ちをとっさに受け止めれるほど できたママじゃないと いつも言うママちゃんも同じくらいダメージを受けてしまう。
こんな出来事があったんだ!Daddy!この気持ち半分受け取っていただけますか~ !!
って、仕事から帰ってきたDaddyに力いっぱい投げつけてきた。
「Daddy 今日、ふー君に初めて 生まれて来て良かった?って言われたよ…」
そしたらDaddyが一言
「そうか…そこは最高の言葉を返してやったんやろ?」
ドヤ顔でニヤリと笑うDaddy。それを見たママちゃん
「…………。」
「あったり前やん!最高の言葉を返してやったさ!!」
ありきたりの言葉しかふー君にかけてあげれなかったのに、ママちゃんはDaddyにこう答えてしまったそうだ。
辛い気持ちを半分渡そうとしたのに、カキーーーンと打ち返された気分になったらしい笑
その時 ママちゃんは
あぁ…この人とは一緒に泣けないんだな…と思ったそうな。
そして、Daddyに負けるもんかと心に誓ったそうな。(笑)
自分の事を考えるようになったふー君。悲しかったけど成長した証だ。