第32話 筋ジストロフィーの息子と共に生きる父のブログ 学校で校長先生と登校班参加の交渉

筋ジストロフィーの息子と共に生きる父のブログ
Facebook にシェア
Pocket
LINEで送る

筋ジストロフィーの息子と共に生きる父のブログ 第32回

5年生になりました

そして高学年になりました。

支援学級の担任はS先生から引き継いだY先生になった。

クラス担任も若い女性のM先生。

クラスと支援学級の担任が2人ともフレッシュなコンビになった。

家庭の都合でおやすみしていたS先生も復帰して帰ってきた。

この頃のふー君の体育の時間は 他の子たちとは別メニュー。

四つん這いになり ハイハイで体育館を1周したり、仰向けに寝転んで ボールをキャッチ、そして前に投げる等。

残りの時間はリハビリで習ったストレッチを先生と一緒に頑張る。

時には みんなと一緒に 手漕ぎで車椅子を漕いで 出来ることに参加したり。

高学年になって考えてたこと

1年生の頃に登校班に入り、みんなと一緒に登校していた時があった。

何回も転ぶ、歩くのが遅い、立ち上がるのに時間がかかる。

そして 登校班自体の登校時間が遅くなってしまった。

他の子に迷惑をかけてまで 参加させるのは嫌だったので 送り迎えする事になった。

それから5年生まで 朝は僕が送り、帰りはママちゃんが迎えに行ったり。

毎朝、自転車で並走したり後ろからついていったり。

高学年になって車椅子で通学しているふー君。

登校班で通学させてやりたいなと 思いながら眺めてた。

転ぶ事もないし、特に危なっかしい事をする事もなかったので、そろそろ学校と話してもいいなと思っていた頃。

そんな時にY先生が 登校班で通学してはどうか?と提案してきてくれた。

正直嬉しかったし、頃合いだと思っていたので これを逃す事はない。

1年生の時の経緯をY先生に話し、それなら 校長先生とゆっくり話す席を設けましょうと話が進んだ。

クラス担任のM先生も支援学級のS先生も そうするべきだと一緒に校長先生に話しましょうと言ってくれる。

支援学級のベテラン先生も

「いつ全介助になるかもわからんから、やるなら今のうち」

と理由がやっぱり腹立つけど、一応は賛成なんやなと 聞いていた。

校長先生と話す前にM先生とY先生が家庭訪問のタイミングを利用して 皆で どう攻めるか作戦会議しようと計画。

S先生も情報共有してくださった。

リハビリ施設の先生達も 中学、高校、その先の事を考えると 手を離すなら 早い方がいい。

と賛成してくれた。

心強い援軍を引き連れて 話し合いの日がきた。

いざ、校長先生と

話し合いは 重〜い雰囲気の中始まった。

「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

お互いの出方を伺いながら話し出す。

「車椅子の操作にも慣れて来たので集団登校させてもらいたいんです。」

Daddyから口を開いた。

事前に話の内容を聞いていたのだろう。

話し合いの朝、校長先生はふー君の登校ルートをチェックしに来ていた。

校長先生は威圧感たっぷりの空気を出してくる。

「・・・」

「そう言われましても、やっぱり危ないと私は思うんです。」

「何かあっても子どもたちでは対処ができないでしょ。」

「車もたくさん通るし、商店街を横断する時はすごい勢いで自転車も走ってきますからね。」

初っぱなから けん制される。

「車や自転車が危ないのは他の子どもたちも同じだと思うんですが。」

重苦しい雰囲気の中、ママちゃんが 頑張って発言する。

「車椅子というだけで、そんなに危ないことですか?車椅子の操作は慣れてきました。」

「車椅子の5年生のふー君と1年生の子どもたちを比べたら1年生の子ども達のほうが危険だと思うんですが!」

「だから登校班でまとまって登校してるんです! 」

「登校時、車椅子のふー君にもし何かあれば登校班の子達が傷つきます。何かあれば責任持てません!」

何がなんでも阻止したいと思われる校長先生の言葉にママちゃんがさらに反応。

最初から認める気が無さそうな校長先生。

珍しくママちゃんの鼻息が荒い。

「校長先生、もし何かあれば他のお子さんの責任は持つんですよね。」

「同じ小学校に通っているのに、うちの子の責任はもってくださらないんですか?うちの車椅子の責任も持ってください!!」

うちの車椅子の責任ってなんやねん…笑

と心の中でツッコんでたDaddy。

シーーーーン……………。

何か喋らなければ、話が前に進まないと必死に訴えていたママちゃん。

嫌~な沈黙が続く。

Daddyは その時、沈黙返しをしていた。

Daddy達が 納得しないといつまでも帰らないとしたら、その時校長先生はどういった打開策を打ち出して来るのかを待っていた。

その重苦しい沈黙を逆手に取っていたDaddyだったのだが

この辺りは ママちゃんと作戦を立てていたわけでは無いから、その沈黙にママちゃんは1人焦っていたようだ。

結果的にママちゃんの話の持って行き方で、Daddyが口を開くきっかけになったのだが

「じゃあ、登校班じゃなければOKですか?他の子に迷惑がかかると言われると僕達 親は、これ以上何も言えません。」

「息子はこれから中学、高校と進みます。いつかは手を離す時があると思います。」

「小さい頃から できる事は自分で!と言い育てて来ました。」

「車椅子になって転ぶ事もなくなりました。他の子と同じように登校する事もできます。マナーも教えました。」

「小学校のこの今が、愛ガードさん、地域のおじさんおばさんが見守ってくれている今こそが手を離す時だと思い、お願いに来ました。」

「僕達もいきなり放り出すつもりではありません。しばらくは後ろから こっそり付いていく事も考えてました。」

「愛ガードさんは あくまでボランティアなので…もし何かあったら…」

「それなら1人で登校する許可をください。登校班には参加させません。愛ガードさんには 僕達から状況は伝えておきます。」

「もし何かあっても学校には一切文句は言いません。誓約書でもなんでも書きます。それなら許可していただけますか?」

「それは……」

その時だった。

静かに校長先生と僕達のやり取りを見ていたY先生が一言。

「じゃあ、危なく無い登校ルートに変更を考えましょう。」

校長先生がY先生を睨みつける。

何を言ってるんだ という顔だ。

Y先生は続ける

「車が危ないと言うならこっちの道の方が良いと思います。」

「ただ人通りは逆に減りますが。商店街が危ないと言うならこっちのルートの方が良いですかね。」

「あ、そうですね。こっちの道の方がいいかも」

「そっちは逆に信号ないから危ないんちゃう」

「じゃあこのルートの方が…」

「あぁ これなら安全かもですね」

流れが、いつの間にか、どうすれば付き添い無しで登校できるかの話に変わった。

校長先生は頭を抱えながら

「とりあえず、今までの登校ルートで 商店街横断は危ないので、商店街までは付き添ってください。」

「登校班には入らないで一人で登校してください。」

と言ってくれた。

Daddyが

「ありがとうございます!」

「登校班には入らないですが、追いつく事や追いつかれる事もあるでしょうね」

「同じルートで同じ時間帯なんですから」

「………」

「分かりました。しばらくはそれで大丈夫です。しばらくは」

「ところで、責任問題の話、一筆書けばいいんですか?」

校長先生は

「……一筆はいらないです」

Daddyからしたら してやったりだ笑

自分の立場もあるのにDaddy達の立場に立って発言してくれたY先生。

感謝しても感謝しきれない。

クラス担任のM先生は発言こそしないが、悲しい顔や困った顔をしながら話し合いを見守ってくださった。

ありがとうございます。

そして次の準備

商店街や、信号、危険な所には愛ガードのボランティアのおじさんが立ってくれていた。

雨の日も風の日も暑い日も寒い日も、地域の子ども達を見守ってくださっている。

商店街までOKが出た。

問題無しとなれば少し距離を伸ばし 次は きっと信号の所までと言う事になるはずだ。

ママちゃんに愛ガードさんにDaddy一家の思いを伝えておいてもらうことにした。

「いつもありがとうございます。この間、小学校で校長先生と登校の話し合いをしてきました。」

「これから先、ずっと一緒にいてやれるとは限りません。少しずつ、将来に向けて手を離していきたいんです。」

「もし、1人で登校のOkが出たら、ここも1人で、通ることになります。すいませんが、その時はよろしくおねがいします。」

愛ガードのおじさんは

「いつもしっかり挨拶してくれてるよ。うんうん。そりゃそうだよ。大丈夫!しっかりみるよ!」

と笑顔で言ってくださった。

通学途中で声を掛けてくれる お年寄りや たこ焼き屋のおばぁちゃん。

みんな いい人で暖かく見守ってくれている。

保育所の時、所長先生に言って頂いた言葉。

子どもは地域で育てるもの

その言葉があったから、素直に愛ガードのおじさんにも頼むことができた。

「ありがとうございます!!」

ママちゃんはお礼を言った。

本当に、優しい人達ばかりだ。

調理実習

5年生になり調理実習も始まった。

あまりウロウロするのも大変だと言う事もあって いつも野菜等を切る係が多かった。

作るのはカレーだったりホットケーキだったり。

後は豚汁だったり。

車椅子でテーブルの高さも微妙、力も入れにくいって事で 時間がかかる。

担任のM先生が支援学級の先生と相談して ふー君専用の包丁を学校で用意してくれた。

こんなやつ

M先生も、ちゃんとふー君の事を考えてくれている先生だけど、怖いらしい。笑

悪いことをしたら めっちゃ怒られて怖いそうな。

ベテランの先生も 頼りになるんだけど、若いM先生、Y先生、そして少し先輩のS先生。

すごく心強い布陣で始まった5年生の話。

続く…

次の話へ

前の話へ

HOME

サイトマップ

筋ジストロフィーな息子と共に生きる父のブログ