2021秋 ⑮重複と欠失 筋ジストロフィーの息子と共に生きる父のブログ

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筋ジストロフィーの息子と共に生きる父のブログ 2021第15話

PCRの検査結果

ふー君がコロナかも知れないと言う事でDaddyもママちゃんも自宅待機になった。

お昼には検査結果が出るらしい。

自分自身で有給を使う事はあまり無いけど、今回は特別休暇と言う扱いで自宅待機。

昼まで言われた通りにウロウロしないで家の片付けや普段出来ない事をしてた。

とは言っても やっぱりPCRの検査結果は気になる。

入院を繰り返し体力の無い今、もし感染したら

と、つまらない事を考える瞬間もあった。

待ってる時間は過ぎるのが遅いもので、時計ばかり見てたな。

お昼を過ぎた頃にふー君から連絡が入った。

検査結果は 陰性。

なんだかんだ 結構ドキドキしてたな。

良かったとママちゃんも喜んでいた。

軽い肺炎と言う事で約10日間の入院。

原因はわからないけど、入院する前の日ぐらいに急激に気温が下がった事で風邪を引いたのかもしれない。

辛いと言わないふー君だけによく観察しないといけないと痛感。

退院の日はママちゃんが1人で迎えに行ってくれた。

慎重な毎日

退院してから さらに慎重に介助。

何より無理はさせない。

元気になるまでは 笑

まずは1ヶ月慎重に付き合うと決めた。

食事もチャレンジはしない。

嚥下機能はそこまで落ちてはいないと言ってもらえたけど、完全に自信喪失している。

とにかく家で無事過ごす事に重点を置く。

それで自信を取り戻すのだ。

朝、声を掛けて起こす。

1晩付けていた呼吸器を外して 約30分様子を見る。

ベッドをリクライニングしたり寝かしたり。

急に車椅子に移乗させて 寝てる間に溜まっているかも知れない唾液を誤嚥させない為。

時には吸引もあり。

少し落ち着いた頃に車椅子に移乗。

以前は朝ごはんは食べていたけど、指導された通り 栄養補助のドリンクをゆっくり飲む。

歯磨きをして、必要ならば口から吸引。

とにかく誤嚥させない。

食後 数10分待ち落ち着いた所で呼吸器。

昼間は鼻マスクで過ごす。

お昼は とろみ付きの豆腐や茶碗蒸し。

プリンを食べる事も。

そして また歯磨きをして 呼吸器。

大学の課題やテレビを見たり、音楽を聞いたり弟や妹とゲームをしたり。

夜も似たようなメニューで慎重に1日1日をクリアしていく。

Daddyやママちゃんが普段の生活に戻り、仕事に出ている時間はヘルパーさんが来てくれたり、訪看さんが来てくれたり。

とにかく ふー君を1人にさせない。

と、シフトを組んで下さっている。

シフトに入っていないヘルパーさん達が 入院中に迎えた20歳のお祝いと退院祝いも、兼ねて顔を見に来てくれた。

20歳のお祝いに誕生年のワインとごま焼酎を

「本当はサプライズパーティも企画してたんだけど、入院しちゃってたから」

「早く渡しとかんと また入院するやろ!」

と冗談を言いながら顔を見に来てくれた。

「落ち着いたら また改めてパーティしよな」

みんなで なんとか いい方向にと思ってくれているのが伝わる。

ヘルパーさんが帰り、すけまるが帰ってくるまでの少しの時間。

みんなが優しく暖かく接してくれる。

その事を改めて考えて 本当に愛されてると思って 1人泣いたそうな。

そう思うなら少しでも 早く元気になって みんなを安心させるのが目標だと話した。

障害年金の診断書

20歳になったので障害年金の手続きをする事にした。

今の専門病院ではなく、小さい頃からお世話になっている大学病院の診断書が必要だそうな。

専門病院は急性期や普段の経過を見てもらう。

大学病院は半年に一度のペースで簡単な診察と経過の報告、そして新しい治療法の話を聞く。

午後からの予約だったので 半休を取って受診。

「お久しぶりです」

「お久しぶりです〜、大変だったそうだね」

「噂は色々と聞いとりますよ〜」

「大変でした。」

何度も入院した話を説明するふー君。

それを身体の状態を観察しながら、優しく聞いてくれる先生。

いつまで話すんだよ と思いながら聞いてた。笑

やはり気になる嚥下の話にもなる。

「先生、今、豆腐とかプリンとか そういう物しか取れてなくて。」

「あ〜そうなんですね、うんうん」

「落ち着いたら、また少しは戻りますかね?」

「そうですね、うん。気胸や肺炎は僕達でも1ヶ月は辛いですよ。」

「そして、やっぱり完全に戻るまで3ヶ月、ふー君は色々と続いたから もう少し見てもいいかもですね。」

「焦って食べようとして繰り返す人が多いんですが、今はそれで大丈夫ですよ。」

「食べていない間に、どんどん落ちて行きそうで不安なんです。」

「そうですね、指先や手足は進みますけど嚥下機能ってのは、落ちるのは後の方なので大丈夫」

「今はやっぱりこの体重のままで、キープでOKだと思います。」

「今年は気胸も何回もしたし、縦隔気腫もしてるし、ズタボロになったね」

「そんな年もあるんですよ。そしてまた落ち着く年が続くようになるんです。」

「そんな年なんだから春までは このままで」

「わかりました。それまでは慎重にいきます。」

新しい治療法

大学病院に来る理由は やはり1番これが聞きたいからだ。

「先生新しい治療はどうなってますか?何かありますか?」

「そうですね、かなり進んでますよ。いいニュースが2つですね」

1、アストラゼネカ製のコロナワクチン。

これはウイルスベクターを使ったワクチン。

ベクターとは(運び屋)の意味で文字通りウイルスを運ぶ。

コロナの流行で このワクチンが世界的に使われた。

ウイルスベクターの課題や副作用のデータが一気に収集できた。

2、この課題や副作用を修正して技術を応用し、筋ジストロフィー治療の課題であるジストロフィンを運ぶ研究に使われる。

本当はフルジストロフィンを運ぶのが1番良いけど、大き過ぎて運ぶのが難しい。

それを小さくしたミニジストロフィンやマイクロジストロフィンを運ぶ研究が米国の2つの製薬メーカーで進んでいる。

ひとつは第3段階を終了し、データを取りまとめ世界各国の承認申請一歩手前。

もうひとつは、これから第3段階が始まるそうだ。

3、これが1番 嬉しかった。

この2つ目の研究の凄い所は 点滴。

一生に一度の点滴でいい。

一生に一度の点滴だけで、効果が持続するのだ。

そして、もうひとつ

筋ジストロフィーの遺伝子異常のパターンで重複と欠失がある。

主に治療法が研究されているのは欠失。

そして1番患者数の多い欠失箇所の研究が優先されている。

欠失の研究でわかった事が重複にも使えないかと研究される。

ふー君は重複だ。

基本、重複の研究はいつも後回しのイメージがあるけど、今回の話は

欠失と重複

どちらにも効果がある!

先生の話を聞きながら 胸がドキドキした。

もう少しもう少しなんだと思った。

そして、最後に

4、飲み薬の研究もされているけど、これはあと5年はかかるそうだ。

アストラゼネカ製のワクチンがウイルスベクターの技術を使ったワクチンなのは知ってた。

でもそれが治療法の進歩に繋がった。

世界中の人が苦しんでいるコロナ。

その治療薬でまた研究が進む。

どんな状況でも 諦めない事が希望に繋がる。

人間って確実に進歩してるんだよね。

きっといつか必ず治療薬ができると思った。

それまで頑張ろうと思った10月半ばの話。

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